16×コモンズ・マーケティング

嫌われた企業をもう一度好きになってもらうためには、自社コンテンツにクリエイティブ・コモンズのライセンスを実装する必要がある。ではそれはどんなものなのか?


また例え話からはじめよう。愛知万博のマスコットキャラである「モリゾー&キッコロ」の顔パーツを入れ替えた「キリゾー&モッコロ」がいま、口コミで急速に拡がっている。これは明らかな著作権侵害であるが、万博協会は「人気が全国区になった証し。実害もなく、目くじらを立てるほどでもない。」と声明を出している。*1

この声明はモリゾーとキッコロを実質的に、フリーライセンスだと認めている。だが私たちは必ずしもそう考えてはいない。なぜか。コンテンツにはAll right Reserved(すべての権利は留保される)が自動実装されているという暗黙の共通認識が潜在されているからだ。いくら国家が関与する公的なキャラクターとはいえ、モリゾーとキッコロでさえ例外でないはず。だからこのようにアナーキーに二次創作するし、口コミだけで広めようとする。

だがライセンサーは「ある程度」なら自由に使っていいよ、と寛容の態度を示しているのだ。そんなライセンサーの心意気を公式見解として法的にバックアップするシステムがクリエイティブ・コモンズであり、これを広告活動においてスキーム化する行為を私はコモンズ・マーケティングと呼びたいと思う。コモンズ・マーケティングの世界観では、企業の一方的主張は素材として扱われ、消費者はその素材を元にオリジナルの主張を飛び交わすことができる。そして企業はその状況を許容しているわけだ。


しかしながら、ここで「ある程度」をカッコ付けしたのには理由がある。これは万博協会が改変行為を「実害がないなら」と但し書きをいれたのと根が深い関係にあるだろう。次回はクリエイティブ・コモンズの段階分けプランと、コモンズ・マーケティングについて洞察を深めたい。

 

*1:asahi.com愛知万博マスコットの偽物登場 口コミで広がる』
  http://www.asahi.com/national/update/0919/TKY200509180192.html