10×ロングテール

週刊東洋経済 7/30号の特集『ブログ資本主義』*1はすべてのブロガー必読の良書である。ちなみに表紙のモデルは、はてな近藤淳也社長。


そのなかでなかなか興味深かったのが、ロングテール理論というもの。右上はアマゾン・ドットコムにおけるロングテール現象を図案化したもので、長い青色の尾っぽのような部分をロングテールと呼ぶわけだ。

ではこの尾っぽは何を意味しているか。アマゾンでは約230万種の書籍を取り揃え、その売れ筋はデータベースにランキングされている。その売上げ構成比は、1〜10万位にランクした書籍は60%。10〜230位にランクした書籍は40%の売上げを占めているという。その40%の尾っぽこそロングテールであり、ネット商業では通常、不採算品とみなされるモノさえメジャーを脅かす力を秘めている。

インターネット創世記前、経済学では20%の商品が80%の売上げを稼ぎ出す『パレートの法則』こそ商売の基本であり、「お客様は神様」といった顧客中心モダニズムは疑う余地のないことだった。ところがロングテール現象を見ると、80:20の法則は万能でないように思える。ブロガーにとってモノは等価値であり、あるいは嗜好は極限までに多様化している。20%のメジャーだけでは飽き足らず、残りの80%をかき集めるのがブロガーなのである。


しかしこれはあくまでサイバー店舗での事例である。リアル店舗では果たしてロングテール理論は応用可能なのか。そう簡単にはいくまい。だが消費者の大半がアクティブユーザー(例えばブログ人口が2000万人を超えたあたりだろう)となったとしたら、赤い急降下の坂はゆるやかに角度を下げ、青い底辺が盛り上がってくるだろう。

そのときに私が予感するのは、それがよりフラットな地平線を描くことである。言い換えればベストセラーという概念が消滅するということだが、事はそう単純でないのは自明である。要はフラットになるまでの過程を想像してみてほしい。つまり赤い急降下の坂から、資本が青い底辺に移行していくという過程である。それはメジャーとマイナーの逆転現象というよりも、分け隔てていた境界が崩れることだ。

精神分析における境界例。そして村上隆スーパーフラット。この2つは確かに世界共通言語になりえている。