36×プレミアム

コンビニで「プレミアム」と名付けされた消費財が増えている。ビール、スナック菓子、サービス産業もそうだろう。そうしたブランド商品にはこれまで、自己の思いがいかに投影されているか、カスタマイズされた表現ができるか主観的価値こそブランドを形成すると看做されていたが、消費者行動論の白井横浜国立大教授によると、私たちはプレミアムな「品質」を重視するようになったという。*1

この記述は一般のユーザーにとっては当たり前だ、と思う認識かもしれないが、マーケターは少なからずの誤解を抱いていたように思う。市場消費分析において、消費者はエンパワーメントメディアやGoogle的カスタマイゼーションによって、高度化・智民化し、主観が先鋭され、すべての物質が相対的なものに奇形されていくと考えられていた。しかし中流階級クラスターにおいて欲望は複雑化しているのではなく(正確にいえば複雑が煩雑になって臨界点を超えた)、もっと欲望即興的に還元されつつある。西武文化的な「ほしいものが、ほしい」のではなく、単純に「いいものが、ほしい」のである。ただしウォルマート的に極端に安くある必要はない。横と並べて一歩抜きん出た上質感が欲しいのだ。

空間が均質化されるがゆえに横並びの共同幻想を脱出しようと、詐術をもって夢を見ようとする。物語消費的な世界観は、消費の現場でまだまだ息づいているようだ。
 

*1:白井美由里「『プレミアム』商品への消費者心理」2007年02月27日、日本経済新聞