仕事7×Soup Stock Tokyo

日経ビジネス Associe 3月号『物語力を身につける』にて、スープ ストック トーキョーを主宰する遠山正道氏の手法が一際目についた。三菱商事社内ベンチャーを利用し、遠山氏はスープストックトーキョーを立ち上げたのだが、その企画書が小説仕立てになっていて大変面白いのである。


「1998年スープの有る1日」 scene1
<プロローグ>
恵比寿の日本センタッキー・ブライド・キッチンの秘書室に勤める田中は、最近駒沢通りに出来た(仮称)Soup Stockの具沢山スープと焼きたてパンが大のお気に入りで、午前中はどのメニューにしようかと気もそぞろだ。
(→具沢山のスープと焼きたてパン)

……(中略)……女性だけで行ける店はかぎられてたが、Soup Stockが出来てからは頻繁に通っている。メニューに表記されているNonfatやLowfatの文字は、彼女たちにとっては神のお告げに見えるようだ。
(→女性の行ける昼食の店の圧倒的不足。ナチュラル、ダイエット需要)

大顔原とMr.UNOは、早食い大食いで有名。Soup Stockでも500ccのLサイズと焼きたての黒パンを平気で平らげるが、部屋に戻ってからはベルトを緩めているらしい。
(→男も、食べてみれば十分なボリューム)

……(中略)……今やすっかり、具沢山スープは食生活の一角を成したが、登場した当時は新鮮だった。・・考えてみれば、スープというものは、0歳〜100歳まで、男女・国籍・貧富・宗教を問わず、早朝から深夜、食事、おやつ、夜食まで、やたらと範囲は広く、明快に「スープは嫌いと」と宣言する人も無く、さては、これほどのポテンシャリティを持った飲食物は、水をしてもまだ見当たらない程のものなのである。
かつては、スターターやサイドとしての役割を背負わされていたが、スポットを浴びせてからは、いきなりブレークし、各々が夫々のスタイルでスープを食生活に取り入れだした。
(→SOUP FOR ALL. Anytime Anywhere. High frequency)


ご覧の通り、ポイントは押さえつつもストーリーにこだわってる。もちろん裏付けのデータも提出したらしいが、お慰みものの儀礼としてに過ぎなかったらしい。社内用とはいえ、さすがは商事さん。なんでもありやで。またお上手なのが、インナー向け(つまり店舗スタッフ)にもそのまんまこの文面つかって、意識の共有化を計ってるらしい。ってことは顧客向けにも当然イケるわけよ。クリエイター泣かせの事業主やぞ。

大分前になにかのインタビューで読んだ記憶によると、遠山氏はお店の空間デザインさえ自分でぜんぶ作ってしまったらしい(NYや青山で個展も開いたりアーティストの一面もあるんだって。かっこええのう)。社長のくせにコムデ・ギャルソンっぽい風貌、むしろ道化師みたいで、ずいぶん変わってるな。でも器用だし頭ええな、と思ってたらやはりかしこい人でした。こーゆービジネススタンスもあるのねぇ。

次はユニクロの柳井 正さんでも研究してみるかな。