6×ポストモダン
昨年、ぼくは小論をかいて学会に提出した。それはそれで良いとして、消化不良なのが、参考文献の記述さえ字数としてカウントされるくせに、6000字以内の規定を設けているため、書き手の読み込み方さえ提示できない浅はかな議論にしかなりえなかった。今年はその復讐戦をしたいと考えている。(実はその動機の本質はそこにはないのだが、ここでは残念ながらまだ書けない。)
恐らくその中心的な素材は「ポストモダン」になるだろう。やはりこの素材は料理の仕方が多彩すぎて、飽き性のぼくもなかなか手放せない奴だ。
ポストモダンに関する昔から今にかけて、なお色褪せない急進的なテーマは「ポストモダン批判」である。アラン・ソーカルによる数学/科学的アプローチからの容赦ない断罪に始まり、昨年サントリー学芸賞を受けた原研哉『デザインのデザイン』でも否定しがたい批判を浴びせている。
- 作者: アラン・ソーカル,ジャン・ブリクモン,田崎晴明,大野克嗣,堀茂樹
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- 作者: 原研哉
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さて、取りたてて準備運動もしていないぼくが描く、おぼろげな輪郭は「しかしそれでもなお、何故ポストモダンの言説は息を潜め続けているのか」という認識論だ。広告縛りの話にしても、例えばまわりを見渡して血気盛んなマーケティング論は押し並べて、「言葉遊びだったね」と自虐化してみせた80年代マーケティングの流行と酷似しているように思う。
コトラーも絶賛している、その顕著がこれだ。
- 作者: スティーブンブラウン,Stephen Brown,ルディー和子
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「なぜ今なおポストモダンか」 この問いに対する印象レベルの答えを示しておこう。「ポストモダニズムの80年代が推し進められることで、世界のポストモダン化が徹底していった」。
つまり彼らが狂喜したのは社会時勢としてのポストモダンではなく、夢想のイデオロギーとしてのポストモダニズムだったのではないか。その仮説が正しければ80年代のマーケティングは当時よりもなお、2000年代以降にこそ有効に働きうるだろう。
とにかく語りうる土壌に対して、まだ何の準備もない。だから急ぎ足で畑を耕したいと思う。その過程で成る実は変わっていくだろうが、ご容赦頂ければと存ず。