7× 贈与

昨年の8月くらいに出した広告論文が入賞した。しかもトップ入選らしい。でもさ、半年もかけて審査していたせいで、もう色褪せちゃってるよ あんなもん。それで受賞式は5月。なんでこんなに時間かかるんでしょうね。

さて、あの論文のキーワードは「共有」である。カンタンにいえば広告を独占化するな。転送せよ、突き放せ!という話で、それはすなわちぼくの個人的な問題意識【ポストモダン化・タコツボ化された社会へぼくたちはどんな態度で接するべきなのか?】に接ぎ木されている。


その態度と極めて似た考え方を『広告批評傑作大会』のなかで見つけた。1992年に行われた糸井重里吉本隆明の対談である。思想家の吉本いわく。

■「企業自体が、CMのイメージが交換価値になるとか、いま有効性と思われているものが商品価値になるんだという考え方はやめて、CMは制作者に対する贈与なんだ、有効性に対する贈与なんだと考える。だから、それは所定の予算に完全に含まれている、バブルであろうとなかろうと、これなしには企業は成り立っていかないんだ、見返りなんて何もなくても必ずやるんだ−−−そういう発想に転換できて、そういう考え方を遂げられる企業は生き残れるけど、そうじゃない企業はダメだと思うんです。」■

贈与とはすなわち、差し上げるという無償の奉仕である。ボードリヤールも吉本と似たことをどこかで言ってるらしい。昔たぶん読んだろうけど、すっかり忘れてしまった。もっかい追尾してみる価値はありそうだ。