3×たばこ

非喫煙者であるぼくは煙草への関心も、政治的背景の知識にも徹底して欠けている。だからこそ冷静に考えられるのかもしれないが、このような嫌煙権の極地を見せつけられれば、やはり直ちにドゥルーズ的な管理社会の片鱗を連想せずにいられない。

JT(日本たばこ産業株式会社)は「大人たばこ養成講座」*1を代表とするマナー広告や、自治体と連携した分煙スペースの設置など、近代的で理性的な試みを行っていた。だがその雲行きが怪しくなってきたのは、商品訴求をする際に特記事項として「喫煙はあなたの体を蝕めます〜」うんぬんの文言を、法的コードを準拠としつつ誰かしらが強制し始めたころだ。その文言は時が経つにつれ日本的で遠回しな言い方をやめ、アメリカナイズドされた脅迫文に変容してきたが、本体面積の3分の1にまでその表記を占有させる右記の所作は、その行き過ぎた延長と考えてよい。


本場アメリカの事情は知る由もないが、我々はともかく近代モデルの変容と、その変容したモデルがどのように偏在しはじめてきたか早急に客観視せねばならない。この嫌煙表記はまだ規制団体へのリップサービスに過ぎないが、喫煙者のマナーが守られていないと察すれば、喫煙行為そのものを排除することは明らかだ。税制で圧迫するか法整備をするか。恐らく最も先に現れるのはレッシグ的なアーキテクチャであろう。自治体で人的に行っている路上喫煙の禁止条例などまだ生ぬるく、屋内といえどもたばこを吸えば感知器で、警察国家へシームレスに通報するようなコンピューティング監視が施行されうる可能性は否めない。

 

*1:http://www.otonatobacco.com/ 書籍化もされている。