40×コンテクスト・ディレクター3

電通のIC局でコミュニケーション・デザイナーという新しい職種名で、新しい広告のあり方を模索している岸勇希という方の講演を聴く機会に恵まれた。Nintendo DSの『漢研』のプロモーションや、結婚式場『マリエール』のCM連動型サイトを手がけたことで一躍名が知られた広告人である。

岸はコミュニケーション・デザイナーという肩書きながら、アートディレクターでもコピーライター出身でもない。どちらかといえばマーケターやメディアプランナーに近いが、そのスタンスは、広告メッセージが理想的な共感と共有が行われるよう読解の環境こそを設計するという意味において、遥かにクリエイターの目的性に接近している。岸はインサイトが重要なのは当たり前といわれるが、ほとんど誰も実践できていないことを始めに警鐘する。おそらく岸は「情報」「環境」という考え方を他のどの業界人よりもセンシティブに捉えている。全体設計者こそがコンテクスト・ディレクター≒コミュニケーション・デザイナーであることを改めて実感させてくれた。

彼のような人材が評価されてきた土壌を心強く思うと供に、新しい表現の可能性と方法論が成就しはじめてきたのを嗅ぎ取り、自分の気持ちも奮い立たせてくれる。私も力強い仕事をしなければならない。