9×ネットワーク外部性

GoogleYouTubeを買収した、というニュースについて梅田望夫は下記のごとく感想をもらしている。

この買収ニュースを聞き反射神経的に感じたのは、「こんなものゼロから作れば俺たちの方がいいものが作れる」という「天才的技術者の発想」より遥かに上位のところで、Googleがきちんと「正しい経営判断」を下す会社になったんだなぁ、ということである。

正しい経営判断とあるが、確かにGoogleGeekの叡智でなんとかしてやるというハングリーな野心より、経済学による「ネットワーク外部性」の必然に迫られたようだ。つまりYouTubeを超える技術やユーザインタフェースを開発することは容易であるにしても、その圧倒的な視聴者数までは奪取できない。なぜなら私たちは意外と怠惰で面倒くさいことが嫌いだ。一度使い慣れた視聴環境を他が優れているからといってすぐに乗り換えることはしない。数多くのIDとパスワードに囲まれてその都度ごとに違う環境へアクセスするよりも、慣れ親しんだYouTubeに腰を下ろすことは明白だ。携帯電話のポータビリティサービスが加速されないと私は予想しているが、同じ理由である(だから私は顧客を無意識的に逃がさないインターフェースデザインやアフォーダンスに関心があるのだ。)

テレビやネット関連など日本のインフラ事業者はバカが多いので、YouTubeのモノマネに追随しまくっているが、ユーザー数が確保できるはずがない。GoogleYouTubeというラッピングに包まれた数千万人の顧客さえまるごと飲み込んだ。梅田が「圧倒的に正しい戦略」と評する起因はシンプルに、効率性にある。


またiPod戦略の成功によりマイクロソフトを出し抜いたアップル社も「ネットワーク外部性」にようやく気付いてきた。アップル社の経営陣にGoogle CEOのエリック・シュミットが参画しているそうだが、マイクロソフト vs Google(こちら側 vs あちら側)の対立構造がますます鮮明になりつつある。両者とも決着の肝は、いかに自社インフラでのネットワークの外部性を担保できるかに懸かっている。