9×決断

北海道へ旅行していた時、澁澤龍彦の展覧会で、澁澤の友人でもある三島由紀夫が寄稿した、ある文章に出会う機会に恵まれた。

「純粋性とは、結局、宿命を自ら選ぶ決然たる意思のことだ」

共同体主義  から 個人主義  に推移していく情勢のなかで、ゼロ年代には決断主義  への転換を迫られている。 そう考えていた私に、この言にはそれこそ宿命的なインスピレーションを与えられた。

私は現代美術で最も好きな作品のひとつに、 宮島達男のデジタルカウンターシリーズというものがある。当時、私はこの作品のメッセージとは、 人間の物語には常に始まりと終わりがあり、個々人は固有の決断を非同期的な時間の流れで下し続けている、ということだと思った。そしていま、その意味は私たちに重要な提案をしているのだと考えている。

あらゆる可能性の中から、ひとつだけ選ぶ決断の背景には、 つねに後悔がつきまとうが、その決断を下した私が私である、と思いたいものだ。そしてそんな言葉を授けてくれる作品や人たちに、出会いたいと願っている。