アート論

パリとアートインダストリー

ある機会にめぐまれてフランスーパリに1週間ほど滞在してきた。ぼくは子供のころからアートについて考えてきた人間なので、一度はパリにいかないとダメだと思いながらずっと行けてなかった。30歳をこえてついに実際にルーブル美術館やポンピドゥーセンターに…

マクルーハン再考 4

高校二年生の時にかいた小論文で、我ながら気になってやまないフレーズがある。 「パウル・クレーの線は、メディアである」NHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』で、漫画家の浦沢直樹が愛好するロダンのクロッキーを皮切りに、絵の輪郭線について語っている…

レイバーワーク

沢山遼『レイバーワーク:カール・アンドレにおける制作の概念』を読んだ。この論文は美術手帖が主宰する芸術評論賞の第一席(グランプリ)を受賞している。ちなみに面識はないが沢山さんは私の大学の、そして同じ学科の後輩である。生まれて10年足らずの学…

アイ・ウェイウェイ展

ひさびさに美術熱が高まっているtakumauです。 森美術館で「アイ・ウェイウェイ展― 何に因って?」を観てきました。スライドショーはこちらです。アイ・ウェイウェイは中国の現代美術家のスター。北京オリンピックのスタジアム「鳥の巣」を考えたのはウェイ…

愛について100の物語

夏休みをつかって、金沢21世紀美術館で開催された「愛についての100の物語」を観てきました。高校の先輩である照屋勇賢さんの作品を観たかったのですが、Zone2の展示は7月までだったので終了・・・。川上未映子のポエムも7月だったようで、なんのために行っ…

文字の認識

ケンブリッジ大学のある研究員が行っている認知心理学っぽい研究が、2ちゃんねるで話題になっているそうです。人間は文字を読むとき、ある程度の文字列が入れ替わっても、普通に元通りの文章のまま読めてしまうという実験があるらしい。例えばこんな文章。 …

マクルーハン再考 3

2008年に休刊になったInterCommunicationの最終65号で、東京芸術大学の佐藤雅彦は、ある意味体系を含んだ物理的信号のことを情報だと定義し、その情報を送り手と受け手のあいだで意味を共有させる行為をコミュニケーションだと定義した。そこで佐藤との対談…

物語論から表現論へ 4

表現論の分析と名付けながら、実際にやっているのは京都アニメーション(略称:京アニ)の太鼓持ちばかりをしているが、実際に京アニこそが表現レベルにおいて評価されるべき作品を数多く残しているから仕方がない。では開きなおって、京アニの優れたところ…

物語論から表現論へ 3

『涼宮ハルヒの憂鬱』の第二シーズンが始まった。このアニメではとんでもない実験が行われていて、呆然とした。第13話と第14話の構成と脚本を寸分足りとも同じにとどめながら、セリフ回しを少しだけ変えつつ、演出をガラリと変えることで作品を成立させてし…

物語論から表現論へ 2

アニメ『けいおん!』のオープニングをずっとずっと、永遠にループしていて、何千回見たのかわからなくなってきた。この90秒には表現で表現すべきことはなにか、そのすべてが詰まっているような気がする。もはや批評ができない状態になっているわけだ。批評…

物語論から表現論へ

YouTubeに音声を吹き込んで『けいおん!』について語ってみました。テクストで書けない分析があれば、なにもテクストで書く必要はないんじゃないかと思い、下手くそなしゃべりで記述したというわけです。けっこう簡単にできるので、今後も試してみたいと思い…

美術に投資

超忙しい合い間をくぐりぬけて、「アートフェア東京」と「101東京コンテンポラリーアートフェア」の展示会に行ってきました。展示即売会だとかギャラリーフェアみたいなもので、ほとんどすべての作品に値札がついてます。株やらFXやるより、美術に投資したほ…

伝達の不確実性によって生じる人間の想像力

部屋を掃除していたら、高校生の時に書いた小論の文集が出てきた。もう10年前になる。たくさんあって恥ずかしい文章ばかりだが、下記に転用するものは、おお、我ながらかなり鋭い視点じゃないかと思ったので採録してみる。誤配とか郵便性とかMAD的空間とか、…

15×卒業制作展

武蔵野美術大学の卒展に行ってきた。私の同級生がパネラーとして登壇するので見ておこうと思ったついでである。5年振りに卒展を見た。ファイン系のレベルが格段に上がっていると感じた。特に油絵科と彫刻科。その1号館が全面コンクリートの建物にフルリニュ…

19×14+Google Museum

Google Earthで、プラド美術館に展示されてるベラスケスの作品が鑑賞できるようになった。しかも絵画は140億ピクセルの高精細なのでズームインして見れるらしい。絵画保存の専門家の間は、デジタルアーカイブやサイバーミュージアムの領域で努力を重ねてきた…

12+13×フォトモザイク

世話になった友人の年賀状をつくっている。なんでぼくが、と思うが世話になったから仕方ない。しかしながら写真をコラージュする作業が楽しくなってきて、自分の年賀状も久しぶりにつくってみようかなという不純な想いが走りはじめてきた。このところは朝日…

11×表現論の不在

『思想地図vol.1』に収録された黒瀬陽平「キャラクターが、見ている。―アニメ表現論序説―」を読んだ。本論では日本のアニメーションにおける批評の空間は物語論に偏っており、表現論を捉えたものが皆無だと分析している。 これは何もアニメーションに限った…

10×想像力

先日、NHKのETV特集 『21世紀を夢見た日々・日本のSF50年』を見ました。ひいき目でなく、とてもいい番組だったと思います。 http://www.nhk.or.jp/etv21c/update/2007/1021.html まぁ私が単にSFファンであるため、興奮してるだけなのですが…。日本の…

9×決断

北海道へ旅行していた時、澁澤龍彦の展覧会で、澁澤の友人でもある三島由紀夫が寄稿した、ある文章に出会う機会に恵まれた。 「純粋性とは、結局、宿命を自ら選ぶ決然たる意思のことだ」 共同体主義 から 個人主義 に推移していく情勢のなかで、ゼロ年代には…

8×ヘンリー・ダーガー

原美術館でヘンリー・ダーガー展を見てきました。7/16まで開催しており、BTでも特集され、ギリギリの日曜だったためか、大変な混雑でした。ダーガーのような作家は、本来、日本には合わないような気もするのですが、少女をモチーフにした意匠と、アウトサ…

7×禁欲とセレンディピティ

むかし、一本の長いひもで婦女の肖像画を描こうと試みたことがある。むろん何本もの、ひもを使ってもよかったし、油彩でも水彩でも構わなかった。当時の私は自分の表現力に限界を感じていたからこそ、あえて自分に制限を設けることで、何かの偶発を引き出そ…

6×記憶

今日はひさびさに図書館に入り浸って『中央公論』『現代思想』『ダカーポ』『広告批評』『美術手帖』のバックナンバーを読み飛ばしまくった。『現代思想』の中で小泉政権時のコミュニケーション戦略の分析があって,世耕弘成というメディア操作の広報マンが…

5×NANA

映画『NANA』はボーカルのナナが月夜をバックに、ケータイをマイクにして歌うシーンが印象的ですが、あのナナの歌声は、遠く雪国でケータイに耳を傾けるヤスにどこまでの再現性を保持して届いてるんでしょうか。そこでぼくはふと、ある実験を思いつきました…

4×2005年の旅3

愛知万博より。人大杉で何も見れず…。写真はさとうりさ作の『player alien』からです。彼女は時代の空気をつかむのがホント上手だなぁ。見ただけで何をいわんとするか想像が膨らみます。というわけで万博はパビリオンに入るだけじゃなく、会場を歩いてるだけ…

3×2005年の旅2

で、ここがあの養老の滝 本店です。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・こんなギャグやるために、なんでこんな歩かなあかんのや。

2×2005年の旅1

岐阜県の「養老天命反転地」にきました。実は名古屋から1時間半くらいで行けるのです。ここは国際的に最も知名度の高い日本の現代芸術家である荒川修作と、詩人マドリン・ギンズによるパプリックアートで、10年前に建設されたものです。意図的に足場を悪く…

1×はじめに

アートに関するカテゴリーをつくってみました。本当はぼくは人生のなかでアートについて一番考える時間を割いたはずなのに、なぜこれまで語ることを避け続けてきたのでしょう。それはアートに対して、ひどく真摯な気持ちでいるし、恐れがあるからのように思…